両建てで証拠金は倍にならない——多い方だけで数える、という決まり
売りと買いを足し算しない、という一行を読み落としていた
「両建て」という言葉を初めて見たとき、私が真っ先に思ったのは「証拠金が倍いるのでは」でした。売りと買いを同時に持つのだから、それぞれの分が必要になるはず。素朴にそう考えていたんです。
ところが金融先物取引業協会の解説を読むと、そうではありませんでした。同じ通貨ペアの売りと買いが対当している部分については、取引額の多い方だけを基準に必要証拠金を算出できると書かれています。この一行の意味を、順番に確かめていきます。
両建てというのは、どういう状態か
同じ通貨ペアで、売りの建玉と買いの建玉を同時に持っている状態です。米ドル/円を買ったまま、同じ米ドル/円を売る。値動きの損益が打ち消し合うので、その部分だけを見れば損益が固定されます。
協会の説明では、この「同一通貨ペアで売り及び買いの両方の建玉を持つ両建取引」がある場合、その部分についての証拠金は、売り買いの取引額を比較してどちらか多い額を基準として算出できる、とされています。
足し算ではなく、比較。ここが素朴な直感とずれる場所でした。
協会の計算例を、そのまま追いかける
協会のページには具体的な数字が置かれています。米ドル/円を100円03銭で1万米ドル買い建て、同じ米ドル/円を100円00銭で3万米ドル売り建てして両建てになった場合、という例です。
| 建玉 | 計算 | 取引の額 |
|---|---|---|
| 買い(1万米ドル) | 100円03銭 × 1万 | 100万300円 |
| 売り(3万米ドル) | 100円00銭 × 3万 | 300万円 |
| 基準になる額 | 多い方を採用 | 300万円 |
| 必要証拠金 | 300万円 × 4% | 12万円 |
単純に足すと400万300円で、その4%は16万12円。実際の基準は300万円の4%で12万円ですから、差は4万12円になります。金額の絶対値より、足し算をしていないという考え方のほうが大事だと私は受け取りました。
同一通貨ペアで対当する建玉が複数ある場合は、その通貨ペアごとに計算する、という注記もあります。米ドル/円とユーロ/円をまとめて1つの計算にはできません。
認められない数え方もある
「対当している部分は重ねない」という発想を広げすぎると、協会が明確に否定している方式に行き着きます。BOE方式と呼ばれるものです。
例として挙げられているのは、ユーロ/円の1万ユーロ買いと、ユーロ/米ドルの1万ユーロ売りを行った場合。この2つを合成して米ドル/円の買いと認識し、そこへ証拠金率を乗じる数え方は認められない、と書かれています。あくまで同一通貨ペアで対当する建玉がある場合に限られる、という線引きです。
通貨ペアをまたいだ合成は、理屈としては成り立つように見えます。それでも規制の側は、そこに線を引いた。読んでいて、規制の文章は「できること」より「できないこと」の書き方に力が入っているのだな、と感じました。
複数の取引を持っているときの数え方
両建てに限らず、複数の取引を同時に持っている場合の証拠金計算には2つの方法があります。取引ごとに計算する方法と、複数の取引を顧客ごとに一括して計算する方法。協会の解説は、どちらも認められていると書いています。
つまり、同じポジションを持っていても業者によって必要証拠金の見え方が変わる余地があるということ。ここは各社の契約締結前交付書面で確かめる部分です。
定額証拠金方式を採っている業者の話も出てきます。「1取引単位当たり○○万円」という形で必要証拠金額を一定期間そのまま使う方式で、合理的な範囲内であれば認められています。ただし条件がついていて、見直しの途中でも常に取引の額に4%を乗じた額を下回らないように留意しなければならない、とされています。
証拠金率の判定は、1営業日に1回以上
必要証拠金の話は、建てた瞬間だけで終わりません。協会の解説によれば、4%以上の確認をするタイミングは新規建玉時と、業者が営業日ごとに1日1回以上定める「証拠金率判定時刻」の2つです。
この判定時刻は、ニューヨーククローズなど業者ごとの判断で決められ、顧客ごとに定めることもできる、とされています。ただし恣意的に変更せず、継続して適用することが求められる、という条件つきです。
両建てにしていても、この判定からは外れません。対当している部分の損益は動かなくても、対当していない部分は動きます。先ほどの例で言えば、売り3万米ドルのうち買いと重なっていない2万米ドル分がそれにあたります。
自分の口座の「判定時刻」を先に調べておく
両建てを試すかどうかより先に、使っている業者が証拠金率判定時刻を何時に置いているかを確認してみてください。取引ルールや契約締結前交付書面に書かれています。時刻がわかると、追加入金を求められる場面の想像がつきやすくなります。
まとめ|数え方を知ることは、守り方を知ること
両建ての必要証拠金は、売りと買いの足し算ではなく、多い方の取引額を基準に算出できる。同一通貨ペアで対当する建玉に限られ、通貨ペアをまたいだ合成は認められない。複数取引の計算方法は取引ごとと顧客ごと一括のどちらもあり、業者によって見え方が変わる。
ここまで整理して思ったのは、証拠金の数え方を知ることは、そのまま「どこで足りなくなるか」を知ることだということでした。仕組みの理解はAI、事実確認は一次情報。今回もその順番で進めています。数字と条件は、必ずご自身で金融先物取引業協会と各社の公式ページをご確認ください。
本記事はAIツールを活用した学習方法およびFX・投資に関する情報提供を目的としたものであり、特定の取引・手法・サービスを推奨するものではありません。両建ては損益が固定される一方でスプレッドやスワップポイントの負担が生じることがあり、有利な手法として紹介するものではありません。AIツールの出力には誤りや古い情報が含まれることがあり、投資判断をAIに委ねることは推奨しません。FXは為替相場の変動により損失が生じるおそれがあり、預けた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります(元本保証はありません)。証拠金の計算方法や判定時刻は業者ごとに異なります。掲載内容は執筆時点(2026年9月)の一般的な情報です。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。本サイトはアフィリエイト広告(成果報酬型広告)を利用する場合があります。
出典
- 一般社団法人金融先物取引業協会「個人顧客を相手方とするFX取引に係る証拠金規制」https://www.ffaj.or.jp/regulation/customers/(2026年9月6日取得)
- 金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」https://www.fsa.go.jp/ordinary/iwagai/(2026年9月6日取得)
- e-Gov法令検索「金融商品取引業等に関する内閣府令」第117条https://laws.e-gov.go.jp/law/419M60000002052(2026年9月6日取得)